ノクターン

ノクターンを夜想曲と訳した先人の感性は素晴らしいと思います。ノクターンというのはラテン語で、夜のという意味の nocturnus に因んだそうですが、これを「夜曲」と呼ばず、「夜想曲」としたところがいい。今は日本語も堕落して!ノクターンといわれているので、私も世相に逆らわないことにします。

この名前は18世紀にはオーケストラまたは室内楽のための短い循環形式の音楽か、または器楽伴奏を伴った声楽曲を指すために用いられたそうです。ピアノの独奏曲のジャンルとしてノクターンを創始したのはアイルランドの作曲家フィールドによるとされています。
ショパンはワルシャワ時代に既にフィールドのノクターンを知っていたに違いありません。 その影響を受けて1827年にはノクターンを作曲しています。
ショパンはパリに着いてまもなくカルクブレンナーに紹介され、彼の前で自作のコンチェルト第1番を弾いたところ、たちどころにショパンはフィールドの弟子ではないかと聞かれました。親友のティトゥスに宛てた1831年12月12日付の手紙には「・・・彼は僕の演奏のスタイルはクラーマーで、タッチはフィールドだというのだ。僕はこれを聞いて狂喜するばかり喜んだ。・・・」と告げています。
そして、後に弟子達によくフィールドのノクターンを練習させました。

ところで、ショパンは始めの頃はフィールドの影響下にあったとしても、次第に独自のスタイルのノクターンに進んでいきました。
ノクターンというと一般に何か感傷的なあるいは甘い曲というイメージがあるようですが、 確かにショパンならではの洗練された優美なメロディーが主体となっているとはいえ、それだけでないのです。それだけだったらフィールドのと変わりない物になってしまいます。音楽は歌でなければならないというショパンのモットーは、ノクターンで最大限に具現されます。言い換えれば、ノクターンこそ歌わなければならないのです。




ショパンのノクターンを出版年順に並べると下表のようになります。
ここでは、これらの作品解説ではなく、私がここがいい、ここが好きだというところを述べていくことにします。とはいえ、そのためにはどうしても曲の細部に亘って行かざるを得ませんが。

 

作品番号
枝番
調性
拍子
小節数
テンポ指定
献呈者
作曲年
出版年
9
1
変ロ短調
85

Largetto

Marie Pleyel 1830-1 1832
2
変ホ長調
35
Andante   1830-1 1832
3
ロ長調
158
Allegretto   1830-1 1832
15
1
ヘ長調
74
Andante cantabile Ferdinand Hiller 1831 1833
2
嬰へ長調
62
Largetto   1831 1833
3
ト短調
152
Lento   1833 1833
27
1
嬰ハ短調
101
Largetto d'Apponyi 伯爵夫人 1835 1836
2
変ニ長調
77
Lento sostenuto   1835 1836
32
1
ロ長調
65
Andante sostenuto Billing 男爵夫人 1836-37 1837
2
変イ長調
76
Lento   1836-37 1837
37
1
ト短調
91
Andante sostenuto なし 1838 1840
2
ト長調
139
Andantino   1839 1840
48
1
ハ短調
77
Lento Laure Duperr? 1841 1841
2
嬰へ短調
137
Andantino   1841 1841
55
1
ヘ短調
101
Andante Jane stirling 1843 1844
2
変ホ長調
67
Lento sostenuto   1843 1844
62
1
ロ長調
94
Andante R. de K嗜neritz 1846 1846
2
ホ長調
81
Lento   1846 1846
遺作
ホ短調
57
Andante   1827 1855
遺作
嬰ハ短調
64
Lento con gran espressione 姉Ludwika とされている 1830 1875
遺作
ハ短調
44
指定なし   1847 1938