ポロネーズ
ポロネーズはその名から直ぐに想像できるようにポーランドの民族舞踊、あるいはそのための舞曲です。そのリズムは譜例1のa、b、cあるいはd
のようなものです。
譜例1a 譜例1b 譜例1c
譜例1d
テンポは中庸です。第2拍にアクセントが付きますが、これは18世紀末以降のことで、それ以前には色々なリズム型があったようです。本来は農民の歌や踊り、戦士の凱旋行進曲として使われたもので、1573年にポーランドの貴族が公式な行進曲として採用されたとのことです。宮廷での舞踏会などで多くは2人組んで威厳をもって堂々と、又そのアクセントに従ったステップで歩くのです。雄壮な性格の音楽です。
また、ポーランドからスウェーデン、ドイツ、フランスに広まり、テレマン、J.S. バッハ、クープランからモーツアルト、ベートーヴェン、シューベルト達がポロネーズを作曲しています。バッハの平均率クラヴィア曲集第1集の第17番変イ長調の前奏曲は終始ポロネーズのリズムとなっています。さらにオペラやバレー音楽、特にロシアの作曲家によるもの、でも聴かれます。
ショパンは7才の時、初めてピアノの先生についた年にポロネーズを作曲しました。これがショパンの処女作です。ト短調で22小節、変ロ長調16小節のトリオ付きです。父ミコワイの生徒だったフリデリク・スカルベック伯爵の妹でショパンの代母だったヴィクトリア・スカルベック伯爵令嬢に捧げられました。1818年1月の「ワルシャワ評論」に『1817年度出版のポーランド作曲家作品表』の中にショパンの作曲したポロネーズの評論が掲載されたのですがーそこには8才のショパンが作曲したものという記述があり,そこからショパンは1809年に生まれたという説が出ましたー、楽譜は紛失していました。後にポーランドの音楽学者ヤキメツキによって後述の2曲と併せて出版されました。
同じ年に変ロ長調のポロネーズも作曲しています。これは父ミコワイによるコピーで知られていますが第2次世界大戦中に焼失しました。又、1821年4月23日に作曲したポロネーズを最初の音楽教師であるジヴニーに献呈しました。
これらの3曲はポーランドの音楽学者 Krystyna Kobylanska によってそれぞれ KK IIa Nr.1, KK IVa Nr.1, Nr.2
と分類されました。その他作品番号を持たない曲と合わせ、下の表に示しました。
ショパンが本腰を入れてポロネーズの作曲に取り組んだのはパリに来てからのことです。生前出版されたのは次の表の中作品61までの7曲です。後の3曲はショパン没後友人のフォンタナがショパンの遺志に反して出版したもので、若書きです。枝番付きは作品26と40だけです。又、作品40の1は”“軍隊”、作品53は“英雄”と呼ばれていますが、勿論これは俗称で、ショパンが付けたものではありません。又、幻想ポロネーズは名前はポロネーズでも本来は幻想曲と言っていいものだと思います。
7曲は名前がポロネーズでも内容的にはそれぞれに個別的な特色を備えています。共通するのは当然とはいえポロネーズのリズムとテンポです。
肝心なことはマズルカの場合と同様にショパンは踊るためのポロネーズを作曲したのではありません。ポーランド人としての誇りを音楽として表現する素材としてポロネーズの形式を選んだのだと思います。従って、舞曲として粛々と踊れそうなのは「軍隊」ポロネーズという俗称で有名な作品40-1しかありません。
ポロネーズにはエチュードやプレリュードのように各曲の間に有機的なつながりはありません。また、枝番がついているのは作品40までで、それに続く3曲は大曲です。そこで1曲ずつ見ていくことにします。
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作品番号
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枝番
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調性
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小節数
|
テンポ指定
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備考
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献呈
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作曲年
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26
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1
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嬰ハ短調
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97
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Allegro appassionato | ダカーポ | ヨーゼフ・デッサウアー |
1834/35
|
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26
|
2
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変ホ短調
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175
|
Maestoso | ヨーゼフ・デッサウアー |
1834/35
|
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40
|
1
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イ長調
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104
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Allegro con brio | ユリアン・フォンタナ |
1838
|
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40
|
2
|
ハ短調
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133
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Allegro maestoso | ユリアン・フォンタナ |
1838
|
||
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44
|
-
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嬰ヘ短調
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326
|
-
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ボーヴォー公爵夫人 |
1840/41
|
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53
|
-
|
変イ長調
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181
|
Maestoso | オウギュスト・レオ |
1842
|
||
|
61
|
-
|
変イ長調
|
288
|
Allegro maestoso | 幻想ポロネーズ | アンヌ・ヴェイレ夫人 |
1845/46
|
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|
8
|
71
|
1
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ニ短調
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83
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Allegro maestoso | ダカーポ |
ー
|
1825
|
|
9
|
71
|
2
|
変ロ長調
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103
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Allegro ma non troppo | ダカーポ |
ー
|
1828
|
|
10
|
71
|
3
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ヘ短調
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68
|
(allegro moderato) [Fontana] | トリオ付きダカーポ |
ー
|
1828
|
この他にチェロとの合奏曲、作品3と、オーケストラ付きの大ポロネーズ、作品22があります。
以下はショパンのワルシャワ時代の作品のKrystyna Kobylanska による分類です。
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分類番号
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調性
|
小節数
|
テンポ指定
|
備考 |
献呈
|
作曲年
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11
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KK IIa Nr.1 |
ト短調
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38
|
ー
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ダカーポ | ヴィクトリア・スカルベック伯爵令嬢 |
1817
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12
|
KK IVa Nr.1 |
ト短調
|
42
|
ー
|
ダカーポ |
1817
|
|
|
13
|
KK IVa Nr.2 |
変イ長調
|
59
|
ー
|
トリオ | ヴォイチェフ・アダルベルト・ジヴニー |
1821
|
|
14
|
KK IVa Nr.3 |
嬰ト短調
|
62
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Moderato | トリオ | デュポン夫人 |
1822
|
|
15
|
KK IVa Nr.5 |
変ロ短調
|
68
|
ー
|
トリオ | ヴィルヘルム・コールベルグ |
1826
|
|
16
|
KK IVa Nr.8 |
変ホ短調
|
127
|
ー
|
ダカーポ |
ー
|
1829
|