変奏曲

ショパンは何曲かの変奏曲を書きましたが、それぞれにエピソードがあります。
もっとも有名なのは’ La ci darem la mano ’による変奏曲、作品2です 。 もう1つエロルドの’Ludovic’からのテーマによる変奏曲、作品12が生前出版されたものです。
あとショパン没後に作品番号なしで出版されたものが3曲、 それから1818年に書かれた変奏曲、1824年にフルートとピアノのデュエットとして書かれたものがあるようですがこの2つの原稿は紛失されています。


出版された4曲についてデータを纏めてみます。

番号

作品番号

調性

拍子
速度指定
小節数
作曲年
備考
1 変ロ長調 Largo etc

-

1827
'La ci darem la mano' による
2
12
変ロ長調 Allegro maestoso
223
1833
Variations brillantes
3
なし
ホ長調 A capriccio etc
177
1826
ドイツ民謡による
4
なし
イ長調 Allegretto
90
1829
パガニーニの思い出
5
なし
ホ長調 Largo
18
1837
ヘクサメロンのために

華麗なる変奏曲 変ロ長調 作品12

この曲は「華麗なる変奏曲」と名付けられていますが、これは出版社が付けたものらしいです。
出版者からの依頼で、「ルドヴィク」というオペラから”私は肩布を売る”というアリアを基に書いたものです。このオペラは最初エロール(Eérold)が書いたが彼が亡くなったためアレヴィ(halévy)が完成しました。

この曲の特徴は変奏番号が付けられていないことです。

4/4拍子の32小節の序奏に続いて6/8拍子の主題が始まります(譜例1)
譜例1
それぞれ8小節ずつのABA 形の単純な3部形式 のメロディーです。

この後に2重線で囲まれた4小節のリトルネロが付きます。

 


第1変奏ではA とB の間に2重線があります。変奏が終わると再び 2重線で囲まれた4小節のリトルネロが付きます。ただし例によって後半は単純な繰り返しではありません。

第2変奏はスタッカートを多用したsherzandoです。ここにはリトルネロは付きません。

第3変奏はLento のカンティレーナです。 装飾音が多く使われています。

最後に主題のメロディーを元にした自由な、華麗な展開があって終わります。


ドイツ民謡(スイスの少年)による変奏曲 ホ長調

この曲はショパンが16歳の時に書かれたもので、ユーゼフ・ソヴィンスキ将軍の妻、ソヴィンスカ夫人に献呈されています。
夫人の求めに応じて夫人宅で15分足らずで書いたそうです。

14小節の序奏の後主題が提示されます(譜例2)
譜例2

これは4小節単位のABA形の単純な3部形式ですが、AとBA が繰り返されます。そして BAは重音で奏でられます。

4つの変奏が行われた後、フィナーレはワルツとなります。


パガニーニの思い出 イ長調

この曲は子守歌の場合と同様に変奏曲という表題は付けられていません。
パガニーニは1829年にワルシャワで5月23日から7月19日までの間に10回コンサートを開き聴衆を魅了しました。 ショパンもパガニーニの超絶的な技巧に感動して 、早速彼の「ヴェニスの謝肉祭」 を基にこの曲を書きました。
主題は譜例3の通りよく聴くメロディーです(譜例3)
譜例3
譜例からも分かるように、左手は終始オスティナート・バス の形の伴奏です。

16小説の主題の後で番号なしに4回変奏が繰り返され、その後で9小節のコーダが付いて終わります。

パガニーニの演奏に倣ってか、華麗なテクニカルな変奏です。

 


ヘクサメロンのための変奏曲 ホ長調

この曲が書かれたことについては次のようなエピソードがあります。
ショパンが親しくしていた、そして大きな影響を受けたイタリーの歌劇作曲家ベルリーニが1835年に亡くなった後、そのオマージュとして6人の作曲達がベルリーニのオペラ「清教徒」の中の行進曲を主題としてそれぞれに変奏曲を書くことになりました。
これはベルジョイオーゾ公妃の依頼によるものでした。
ベルジョイオーゾ 公爵はイタリアでの革命の難を逃れてパリに亡命した貴族で、 公妃はパリでサロンを開き、芸術家達と交遊しました。歌も上手だったそうです。リストとタールベルグの’決闘’を企画したのも彼女です。
この演奏会を呼び物にした3日間の慈善コンサートで競りをかけるための依頼だったのです。1837年のことでした。
この企画を取り仕切ったのはリストでした。作曲を受け持ったのは、リストのほか、タールベルグ、ピクシス、チェルニー、エルツ、そしてショパンでした。6人ということでヘクサメロンと名付けられたのです (ヘクサというのは6の連結形です)。
元の行進曲というのがどういうものか分かりませんが、ショパンが書いたのはラルゴでした(譜例4)。
譜例4
4小節のメロディーが4回繰り返されて終わりです。つまり16小節の短い曲です。

行進曲というイメージからほど遠い感じなのは、おそらくショパンのベルリーニへの挽歌だったのではかと想像します。

メロディーは単純に繰り返されますが、伴奏形は4つとも異なり、特に3番目はホ長調から嬰ト長調に突如転調します。
最後に一寸リフレインがついて終わります。