ショパンが作品を献呈した人のリスト

ショパンが自分の作品をどういう人に献呈したかを見ることによって、その曲の成り立ち、経緯などが分かって興味が湧いてきます。作曲年と作品番号の順序が一致しないのは、出版年との関係です。出版するときに番号が決まりますから。ショパンの曲はブライトコップ・ヘルテル(独)、シュレジンガー(仏)、ウェッセル(英)社から出版していて、出版月は微妙に異なります。大体作品番号は出版年順になっています。ただしこれにも例外があります。特に目立つのはプレリュード作品28です。

なお、これはMaurice J.E. Brownのindex 、いわゆる Brwon Index、に拠っています。これを見ると貴族の奥方や令嬢に多くの曲を献呈していることが分かります。献呈者たちについては詳細がまだ不明なことが多いので、今後さらに調査を続けようと思っているのですが、これは中中の難事業です。情報を得次第補足していきます。

 

     
作品番号
曲名
作曲年
出版年/月
献呈者
備考
1
ロンド ハ短調 1825
1825/6
リンデ夫人  
2
ラ・チ・ダレム・ラ・マノ変奏曲 変ロ長調 1827/28
1930/1
ティトス・ヴォイチェホフスキー  
3
ピアノとチェロのためのポロネーズ 1829
1831/8
ヨーゼフ・メルク ラジヴィーウ
4
ソナタ第1番 ハ短調 1827/28
1851
ヨーゼフ・エルスナー  
5
マズルカ風ロンド ヘ長調 1826/28
1828/2
アレクサンドリナ・モリオール  
6
4つのマズルカ 1830
1832/12
プラター伯爵令嬢ポーリーヌ  
7
5つのマズルカ 1830/31
1832/12
パウル・エミール・ジョーンズ 最終版
8
ピアノトリオ ト短調 1828/29
1832/12
ラジヴィーウ公  
9
3つのノクターン 1828/29
1832/12
マリー・プレイエル  
10
12のエチュード 1829/32
1833/7
フランツ・リスト  
11
ピアノコンチェルト第1番 1830
1833/7
フリードリッヒ・カルクブレンナー  
12
華麗なる変奏曲 1833
1833/12
エンマ・ホースフォード  
13
大幻想曲 イ長調 1828
1834/4
ヨハン・ペーテル・ピクシス  
14
クラコヴィアク ヘ長調 1828
1834/7
マルチェリーナ・ツアルトリスカ  
15-1,2
ノクターン 1830/31
1833/12
フェルディナンド・ヒラー  
15-3
ノクターン ト短調 1833
1833/12
なし  
16
序奏とロンド 変ホ長調 1832
1834/3
キャロリーヌ・ハルトマン  
17
4つのマズルカ 1832/33
1834/3
リナ・フレッパ  
18
ワルツ 変ホ長調 1830
1834/6
ローラ・ホースフォード  
19
ボレロ ハ長調 1833
1834/10
エミリ−・ドゥ・フラオー伯爵夫人  
20
スケルツォ第1番 ロ短調 1831/32
1835/2
トーマス・アルブレヒト  
21
ピアノコンチェルト第2番 1829
1836/4
デルフィーナ・ポトツカ伯爵夫人  
22
アンダンテ・スピアナートとグランド・ポロネーズ 1831
1836/8
エスト男爵夫人  
23
バラード第1番 ト短調 1831/35
1836/6
シュトックハウゼン男爵  
24
4つのマズルカ 1834/35
1836/1
ペルテュイ伯爵  
25
12のエチュード 1832/36
1837/10
マリー・ダグー伯爵夫人  
26
2つのポロネーズ 1834/35
1836/7
ジョーゼフ・デッサウアー  
27
2つのノクターン  1835
1836/5

アッポニ-伯爵夫人

 
28
24のプレリュード 1836/39
1839/6

カミーユ・プレイエル(仏、英版)

ケスラー(独版)

 
29
即興曲第1番 変イ長調 1837
1837/10
カロリーヌ・ドゥ・ロボー伯爵夫人  
30
4つのマズルカ 1836/37
1837/12
ヴュルテンベルグ公爵夫人  
31
スケルツォ第2番 変ロ短調 1837
1837/12
アデール・ドゥ・フュルシュテンシュタイン伯爵夫人  
32
2つのノクターン 1836/37
1837/12
ビリング男爵夫人  
33
4つのマズルカ 1837/38
1838/10
ローズ・モストウスカ伯爵夫人  
34-1
ワルツ 変イ長調 1835
1838/12
トゥーンーホーエンシュタイン令嬢  
34-2
ワルツ イ短調 1831
1838/12
イヴリ男爵夫人  
34-3
ワルツ ヘ長調 1838
1838/12
A. アイヒタル嬢  
35
ソナタ第2番 変ロ短調 1837/39
1840/5
なし
 
36
即興曲第2番 嬰ヘ長調 1838/39
1840/5
なし
 
37
2つのノクターン 1838/39
1840/6
なし
 
38
バラード第2番 ヘ長調 1836
1840/9
ローベルト・シューマン  
39
スケルツォ第3番 嬰ハ短調 1838/39
1840/10
アドルフ・グートマン  
40
2つのポロネーズ 1838
1840/12
ユリアン・フォンタナ  
41
4つのマズルカ 1838/39
1840/12
シュテファン・ヴィトヴィツキ  
42
ワルツ 変イ長調 1840
1840/7
なし
 
43
タランテラ 変イ長調 1841
1841/10
なし
 
44
ポロネーズ 嬰ヘ短調 1840/41
1841/11
ボーヴォー侯爵夫人  
45
プレリュード 嬰ハ短調 1841
1841/11
エリザベト・チェルニチェフ公爵女  
46
演奏会用アレグロ 1832、41
1841/11
フリーデリケ・ミューラー  
47
バラード第3番 変イ長調 1840/41
1841/11
ポーリーヌ・ノアイユ  
48
2つのノクターン 1841
1841/11
ローラ・デュペレ嬢  
49
幻想曲 ヘ短調 1841
1841/11

カテリーヌ・ドゥ・スッゾ公爵夫人

 
50
3つのマズルカ 1841
1842/9
レオン・シュミトコウスキ  
51
即興曲第3番 変ト長調 1842
1843/4
エステルハーツイー伯爵夫人  
52
バラード第4番 ヘ短調 1841
1843/11
シャルロット・ドゥ・ロスチャイルド男爵夫人  
53
ポロネーズ 変イ長調 1842/43
1843/11
オーギュスト・レオ  
54
スケルツォ第4番 ホ長調 1842
1843/11
クロチルド・ドゥ・カラマン(仏)
ジャンヌ・ドゥ・カラマン〔独〕
 
55
2つのノクターン 1843
1844/8
ジェーン・スターリング  
56
3つのマズルカ 1843
1844/8
キャサリーン・メーバリ  
57
子守歌 変ニ長調 1844
1845/6
エリーズ・ガヴァール  
58
ソナタ第3番 ロ短調 1844
1845/6
ペルテュイ伯爵夫人  
59
3つのマズルカ 1845
1845/11
なし
 
60
舟歌 嬰ヘ長調 1846
1846/10
シュトックハウゼン男爵夫人  
61
幻想ポロネーズ 変イ長調 1846
1846/10
アンヌ・ ヴェイレ夫人  
62
2つのノクターン 1846
1846/10
R. ドゥ・ケンネリッツ嬢  
63
3つのマズルカ 1846
1847/10
ラウラ・チョスノウスカ伯爵夫人  
64-1
ワルツ 変ニ長調 1846/47
1847/10
デルフィーナ・ポトツカ伯爵夫人  
64-2
ワルツ 嬰ハ短調 1846/47
1847/10
シャルロット・ドゥ・ロスチャイルド男爵夫人  
64-3
ワルツ 変イ長調 1846/47
1847/10
カトリーヌ・ブラニッカ伯爵夫人  
65
チェロソナタ ト短調 1845/46
1847/10
オーギュスト・フランショーム  
66
幻想即興曲 嬰ハ短調 1835
デスト夫人のために 遺作
67-1 マズルカ ト長調 1835
ムオコシエウィッチ嬢のため 遺作
67-2 マズルカ ハ長調 1835
クレメンチナ・ホフマンのために 遺作
69-1
ワルツ 変イ長調 1835
マリア・ヴォジンスカのために 遺作
70-2
ワルツ ヘ短調  1841
複数人に 遺作
70-3
ワルツ 変ニ長調 1829
コンスタンチア・グアドコウスカ 遺作

この表を見るとショパンが2曲献呈した人はデルフィーナ・ポトツカ伯爵夫人(作品21のピアノコンチェルト第2番と作品64の1,子犬のワルツ)とシャルロット・ドゥ・ロスチャイルド男爵夫人(作品52のバラード第4番と作品64の2のワルツ)だけです。作品21のピアノコンチェルトは、ショパンは当初片思いのコンスタンチア・グアドコウスカに献呈する予定にしていましたが、出版が遅れたためか、さらには恋心が冷めたせいかデルフィーナの献呈されました。

誰しも疑問に思うのはあれほど愛したジョルジュ・サンドには1曲も献呈していないことです。ショパンは「彼が聴いて満足される程度の演奏が出来るものにしか作品を献呈しないというかなり頑固な拘りがあり、・・・・・サンド夫人ですらただの一度も作品の献呈を受けたことがなかった」そうです(平野啓一郎著「葬送」)。確かにこれは説得性があるように見えますが、あの「英雄」ポロネーズを献呈された銀行家レオがピアノを弾けたとはちょっと信じかねるので、ショパンの拘りにも例外があったのかなと思います。ショパンがレオに恩義を感じていたことは明らかですが、それではサンドにはそれ程感じていなかったのか、そんな筈はないので、まだ他にもサンドに献呈しなかった理由があると思います。

以下は K. Kobylanska の分類で生前未出版だったが献呈者が明記してあるものです。

 

KK番号

曲名

作曲年

献呈者

IIa Nr.1 ポロネーズ 変ロ長調 1817 ヴィクトーレ・スカルベック伯爵令嬢
IVa Nr.2 ポロネーズ 変イ長調 1821 ジヴニー
IVa Nr.3 ポロネーズ 嬰ト短調 1822 デュポン夫人
IVa Nr.5 ポロネーズ 変ロ短調 1826 ヴィルヘルム・コルベルグ
IIb N5.5 マズルカ イ短調 1841 エミール・ガイヤール

10/28/02 更新